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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
一年でも二年でも会わず養生しなければならない。そんなことなんてあるもんか! そんな病気をしているなんて承知出来ない。病人の仲間入りをして、朝から晩まで病人ばっかりの中に生活するなんて、そんなことは我慢出来ない。いやだ、いやだと声になって出るように、感情がせき上げました。
夕飯になっても中野さんが来ないので、すこし腹が立って(約束していたのだから)いるうち、あした日曜日でまる一日何だか分らない苦しい気持でいるのは下らない、安田さん(自注10)に診察して貰おうと思いついた。すぐ電話をかけたら、九時すぎにかえる由。出かけました。体の工合は、先にも診て貰ったことがあるので、ホホウというわけ。だが、こんな景気のいい肺病は見たことありませんがね、まア拝見しましょう。すっかり細かに聴いて、叩いて、「何もきこえませんよ、肋膜もないし、きれいなもんですよ」念のためと云って、血圧を計りました。130。「ずっとあるかと思った」これも成績良好。次に動脈から血をとって赤沈をしらべ、別に何か注射して反応をしらべました。注射した薬は、もし体内に活動中の菌がいれば、二十四時間内に、ひどく膨れて水腫れになる由(壺井さんのマアちゃんが、何かの試験で腕が膨れて痛くて動かせないと云っていたのは、このことでした。