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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
この頃はおとなり(大家さん)で倒れた塀を直すためにずっと大工が入っていて、昼間はずっとカンナ、ノミ、丁ナの音が絶えません。何だかきのう大工が来て、寸法をはかって、玄関をはり出して三畳をつけ、そうすれば二階にもう一間出来るから住みよくなると云っていた由。どういうことなのかよく分らない。この頃貸家払底で家賃も上って来ているので、ここの大家さん、勘定だかく、家をすこし間数ふやして40か¥45とる魂丹かもしれず。こっちへ何と話をして来る気か、とそのときまで放っておくつもりです。家賃をこの位にしとうございますが、それでいらして下さればこれに越したことはない、もしお高すぎるなら御無人ですし云々、そんな口上を述べるつもりかとも思う。マアそのときのことです。庭の竹垣越しに並んでいる材木を見ると、塀だけではない柱材が立てかけてある。家主心理というものは面白いでしょう? 家賃値上げを禁止しているが、間どりを変更するのは家主の自由、それに従って高くするのも自由、つまり方法によっていくらでも上げられるのです。他の一方では、あげられないことになりましたから、と材木高を口実に、ひっくりかえりそうな家が、あの大嵐に遭っても材木一本手入れせぬ。