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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

――○――

朝、真先にお早うを云うのはなかなかようございますね。私の早起きの習慣は、こういう御褒美つきで奨励されているわけです。

これから、いつも二十三日に花を買おう、私たちの花を買おう、そういう気持がそちらも持っていらしたということ、面白いこと。

今年のあなたのお誕生日には何をしましょう。折々たのしみにして今から考えています。去年私たちの五年の記念にあなたが書いて下すった字で私の本のための印をこしらえた。一つ捺してあげたの御覧になったでしょう? はじめての印は父がこしらえて呉れた、水晶。あれは一生使えるように堅いツゲの木です。今年のお誕生日の記念に何をしましょうね、蔵書印をこしらえようかしら。又あなたの字をつかって、並べて、ぐるりを工夫して。それともこれは八年目(足かけ)のおたのしみにとっておきましょうか。八年目の二十三日には一まわりして週日も同じになるから。帯だけはもうきめてあります。昔の女は帯を縫ったのね。

そう云えば実録文学の山治君、段々妙な実録で「池田成彬」というシナリオをかいたりするが、この間「坂本龍馬の妻」という脚本を書いた。