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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
三畳から廊下が茶ダンスの裏を通っていて風呂場。奥が台所。台所を通っている廊下が、カギの手に六畳の入口へまわって来ていて、それはまた鍵の手に玄関を入ったところまでのびているという工合です。
テーブルは、山田のおばあさんがお祝いに呉れた黒いカリンを出してつかって居ります。(どうしたでしょうねあのお婆さん。お祝を貰ったときにはお返しが出来なかったから、その年の暮には娘さんに十五円ばかりの羽織地、お婆さんに毛糸のフカフカのチャンチャンを上げ、大変よろこばれて私もうれしかったけれども。)テーブルの左に例の長火鉢。私はまるで子供がままごとをして、おうちの形をこしらえるように、前をテーブル、左手を長火鉢にかこまれて、居心地よく納っていると申す塩梅です。
○おなか大したことなくてようございましたね。お風呂で、さぞだるかったでしょうね。きょうは、妙に私の耳が鳴るというか、圧力が鼓膜に加っている感じで何だかヴェトーヴェン式でいやな心持であったが、かえって用のない人に会っていたらめまいがして、あと床についたら、カゼの気味でした。ゆたんぽをあて背中をぬくめたらすっかりいろんなことが直りました。