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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
上落合の家へ越した年の十二月初めに、夕刊で、市ヶ谷へいらしたことがわかった。その晩あわてて、着物買ったり何か栄さんとした。あの時分は落付かず。詩人の病気は益※(二の字点、1-2-22)悪くなって来ていたし。仕事としては、バルザックの一寸した研究(リアリズムの解釈の誤った解説に盛につかわれていたから)小説「乳房」その他。この時分はまだ徳さんの現代文化社があったり『文学評論』がともかくあったりした時期。五月から十月下旬まで淀橋。この間に『冬を越す蕾』が出版されたわけです。翌年の三月二十五日? だったろうか、一応かえる迄に一月三十日に父が没した。その前後のことは別にいろいろの点からかかれていると思います。
国が、家の主人となって、例えば戸塚夫妻、中野さん等来てくれても、一つ家に私がいるのがいやと云うのではないが、持ちこむものがいやなのね。一緒に食事するのがいやだと云ったりいろいろで、咲枝は板ばさみだし、私は我慢ならぬ。てっちゃんがかえったのは引越し前の冬だったでしょう。池さんの細君との間が破れたのもこの頃でしょう。
目白へ家をさがした心持は、思い出一しおの故です。