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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ずーっと眺めかえすと、主な糸はやはり三、四本ですね。
てっちゃんの結婚は、てっちゃん流で、友人の誰もよばれず。独特にやっている。旦那さん二階で御勉強、細君は下でコトコト働く。「清子さんの趣味は何?」「サア、働くことでしょうか」そういう工合でやっているし、これからやってゆくでしょう。あの人はそれで落付けるのです。そういう種類で初めて落付ける。そうらしい。家はまだ一度も訪ねず。
徳さんが戻る迄は、歌子さんも折々見えました。この頃はもう安心して、たんのうして、忙しく勤めていて見えませんが。製本して貰う女のひとなども去年の秋ごろからの知人。動坂の家へ遊びに来ていたような親娘のひとたち、まるで会わない。メイソーさん二度ぐらい会ったきり。細君はまだ。コヤさんは結婚したとききましたが(メイソーさんから)やっぱり知らず。会いそうな人が却って会わないのは、いろいろと面白い。母娘さんたち、私は大して会いたくもないが。人々のうつり変りの中で、思い出す毎に切ない気のするのは、詩人の細君が、消息不明なことです。どこかへどんな男かと消えた。可哀相に。何も分らないひとだから。