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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
対象を通して勉強したい、その心持です。勉学は却って書きたい気をおこさせ、書きつつ又それをつづけるのは一層味ふかいのです。今のように、せっつかれないときに、はじめてそれが出来ます。今のところ勉学はやめられません。その位面白い。この本は特に面白くて、かめばかむほど味が出る。この前にも一寸かきましたが、物理の問題にしろ、数学にしろ、生きた好奇心を刺戟され、精神のよろこびが察しられて来て、しきりにソーニャ・コ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)レフスカヤを思います。彼女はどんなに数学をとらえていたのだろうかと。私は一人、女のひとで数学の才分がすぐれていると云われた人を知っているが、そのひとは大変図式的な頭です。新しく動的関係で発見された方法を、形而上的なやりかたでやる。そういうのが多いのではないかと思い、ソーニャはどんなだったろうと知りとうございます。あの伝記には、そういう最も内奥的なモメントはとりあげられて居ませんものね。だから伝記もさまざまね。伝記の精髄(それぞれの専門において)がぬけた伝記も多いわけです。
きのうは、午後から『輝ク』の(時雨女史の会)歳末会があって久しぶりで出席したら私が丈夫そうになったと口々に云われ、何をつけていてそんなに艶がよいのかと云われ、一々朝起き早ねをその原因として申しのべました