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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ところで、いくつかの課題というようなものの中で、この間云っていらした江古田の人のことを、又書かなければならないのでしょうが、私は、どちらかというと受け身で、又書いて御覧と仰云るから、書きませんという理由もないから書くが、どうも妙だ。やがては足かけ三年も経たこと、細かく思い出せないようなこと、私もその渦中にいたけれども、真の当事者たちは勝手に自分たちの生活を展開させ、それぞれ勝手に子供を生むような今、どうして、このことは、こんなに私たちの生活の中にだけのこって、何となし妨害物めいたものとしてなければならないのでしょう。そして、私は何故、又くりかえし書く、ということ、それ自体に明瞭に嫌厭を感じる(あなたがそうくりかえしくりかえしふれていらっしゃるからには何かがあるに相異ない。しかもそれがはっきり、成程その点がそうかと、書く毎に自分ではっきりして来るというのでないので)のに、書かなければならず、あなたとしてお書かせにならなければならないのか。それはこの間うちから考えられていることです。本当に何なのだろう。不愉快であってはいけないことだろう? と仰云ったわね。