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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
科学的であるか、科学的明確さに立って現実を見ているか、それとも主観的な道義感みたいなもので立っているかの相異であって、私にはこれまで多分にあとの要素が作用していたと思う。ここが、なかなか面白いというか、危険なところで、あるところまでは推進的な力として働くが、一程度に達すると後退、固着、固執の方向をとらせるものです。あなたの内的状況と比べて、こういう私のゴタゴタを見るとき、きっとあなたには、どうして一目瞭然、理性がそれを現実の地辷りやくねくやを目撃しないかと、不可解のようにお思いになったろうし、なるでしょうね。道義的な主観性というようなものはエーヴやその母にさえもあった。すべて十分の科学的視野に立たぬものの生活につきまとうものです。
本当に百合子論考えておいて下さい。出来たらどうかおくりものとして下さい。真の納得やハッと分ったというのは、本人がその機運まで迫って来たときでなくては真価を十分発揮しないものですが、私は少くとも半年前よりは多くの摂取的条件を、自身のうちに増していると信じますから。紙のひろさに制限があるのに勝手なお願いのようですが、頂けたらどんなに有益でしょう。