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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

年内に(正月の十日に入営故)隆ちゃんにお祝を送りとうございますね。いろいろにつかえてお金でもよいでしょう? このこと考えておいて下さいまし。達ちゃんの入営のときは、十円お送りした(達ちゃんに)と覚えて居ります。新しい丈夫な財布を一つ買ってその中にカワセを入れて隆ちゃんに送って上げましょう、ね。達ちゃんは雑誌の他、岩波の『坊っちゃん』『小公子』その他送ったから冬ごもりの本はあります、ハーモニカもあるし。

早く癒そうと随分大切にしているのに、ダラダラと永いこと。それに私は大変珍しい経験をして居ります。これまで盲腸をやったときも何かひどい熱を出したときも、土台は疲れが原因であったと見え、横になっていることにちっとも苦がなかった。夜も昼もよく眠って、夕刻から段々夜になり、本当の眠る時刻が来た刻限に、一種の焦々した心持を感じたりしたことなかった。初めて、今度はそういう気持を経験して、寿江子曰ク、「くたびれでない病気ってそういうものよ。」

そこでいろいろと、考え、私が今まで思って見ることも及ばなかった、そちらでの病床の気持について、新しく感じました。実に大したことであったと思います。