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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
でも、考えて見れば、それはぎりぎりのところでは、当っている観察なのですが。勿論今はそのことも分っているのです。
丸善へ行ってきいたら、分類目録はつくれないのだそうです。只今のところ。為替がどんどん代るし、本の種類のよしあしもかわるので。しかたがないから『学鐙』と一緒に『アナウンスメント』をお送りして貰うことにします。『大尉の娘』は東大久保の家で見つけ出しました。プーシュキンの全集とゴーゴリ、チェホフなどあります。順々にお使いになれます。
他の本、今明日うちに届くからお送りします。生活の細々した日常のことは、ちゃんとした筋がとおっていれば、それに準じておのずから整理され、純一されてゆくものですから、どうか御心配なく。まさか私も、小道具で舞台を見られるものにして貰ってゆく役者ではないから、その点は本当に御心がかりなく。
手紙をかきながら涙をこぼしたりして。人生の過程の様々の瞬間について考える。小さなような、而も深い深い有機性をもっている畏るべき底広き渦紋が在る。或るほそいほそいすき間からさして来ている光線は一条であるが、その彼方に光の横溢があるというときもある。