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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ふーふーとなって、それでも可笑しくて、皆に吹聴したけれども、そう皆は可笑しそうでないので、又可笑しかった。
御父さんは赤紙が来たとき、よかったと仰云った由。きのうは、出発の前、組合の人々が来て、女連は台処を手つだい、店と次の間とをぶっこ抜きにして天井へすっかり旗をクリスマスのように張りめぐらし、送別に来た人に御馳走とお酒を出します。父上を奥へお置きしては亢奮していけまいと母さんは、二階へお上げすると仰云ってでしたが、八日は朝から父上御機嫌がわるく、人々が集りはじめたら益※(二の字点、1-2-22)怒っていらっしゃる。それで不図気付いて、「お父さんここで見ていらっしゃりたいのでしょう?」と私がきいたら合点をなさる。二階を指して手をお振りになる。それでこそと、お母さんも「ホウホウ、そいじゃここで見ていたいちうのだったか」とそこにずっとお床をおいたままで、ずっと混雑の有様をきげんよく見ていらっしゃいました。午後一時頃、土蔵の前のところで家内だけ、父上、お母さん、私、隆、達だけで小旗をもった写真をとりました。よくお父さん暫くでも椅子におかけになれました。