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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
泉子さんの体はいいあんばいにそれ程大したことはないそうですが、これまでの柏木の家は日当りわるく不健康なので世田ヶ谷へこしました。トマトの苗やなんか買って大いにやっている由。重治さんは市の失業救済の方からの口を見つけて日給一円三十銭で毎日通勤してナチの社会政策の翻訳をして居ります。世田ヶ谷から通うのは大変でしょう。
鶴さんの盲腸はおさまりました。私はあれを見ると自分の盲腸にも腹が立って、しきりにはと麦の煎薬をのみ、この頃はすこしましです。この間島田であんな無理をしたが、出なかったから。それに三共でうり出しているモクソールという注射液が大変によいそうで、これからすこしこの注射をやります、但注射なのでね。誰かにして貰わなければなりません。
栄さん夫妻、相かわらず、爽やかに而して貧乏して居ります。手塚さんは島田へわざわざ達ちゃんの送別の手紙をくれました(前便で書いたと思いますが)
伝記が豊富な題目に溢れているのは全くです。実に豊富です。そしてそれをすっかり活かし切るようなものが書けるということの歓びは、決して単に箇人の才能とか学識とかの問題に止まらない。