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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
「無電室があるから、シンガポールの兄さんへ無電を打とう……上川将軍が暗号を教えてくれたから、兄さんなら呼び出せるんだ」
「それがいいわ」
だが、無電室には要塞員がいて、絶えずどこかと連絡をとっているらしく、誰もいない隙をねらって打電することなど、思いもよらなかった。
二人はしばらく、無電室の鍵穴から中の様子をうかがっていた。
ツーツーカチカチツーツーカチカチ……無電室の中からは、絶えず電鍵の音が聞えて、レシーバーを耳にあてた二人の男が、外部との連絡をとっていた。
一人は赤ら顔のずんぐりした男だったが、一人は、どこかまだ子供っぽい顔をした、すらりとした痩がたの青年だった。
レシーバーを放りだすと、青年は立上って低い鼻声で歌をうたい、それから二人で何か愉快そうに話しだした。
二人は次のような話をしていたのだが、英夫たちには、ところどころしか聞きとれなかった。
「今晩はいやに交代の時間が長いような気がしますね、中尉殿」
そういったのは赤ら顔の男だった。青年の方が上官だったのだ。
「ニュースがないからだよ、首を長くして待っているニュースがね……それとも貴様酒でも飲みたくなったんだろう、はっはっは」