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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

王様の邸で

「河井、成功を祈るぞ!」

「ありがとう、君たちの武運長久を祈ろう」

謙一は立上って、二人の大尉と乾杯した。

「そうだ、忘れていたが、鳥尾はこんど熱帯病についての学位論文が通って医学博士になったよ」

「鳥尾のおじさん、おめでとう!」

英夫がいうと、

「ひやかしちゃあいかん、戦いはこれからだ!」

三人の軍人は、コップのサイダーをぐっと一と息にのみほして、お互いの武運長久を祈った。

王様の邸で

「どこへ行くんですか、兄さん?」

翌朝になっても、謙一は、ボルネオの話など、一向にしそうにもなく、朝飯がすむと二人をせきたてて自動車に乗せ、自分でハンドルを握った。

英夫の問いには答えようともせず、

「今にわかるさ」

と、にやにやしている。

涼しそうな木蔭をつくった並木や、水の出ていない噴水のある海岸通をぬけて、アラビア風のお寺のような、円い屋根の建物のある街に入った

「ここは、マレー人ばかりの街だよ、アラブロードといっていたところだ」

門構えの、広い庭のある邸の前で、ギ、ギ、……と自動車を止めると、ドアを開いて、

「シンガポールの王様に会わしてやろう、降りたまえ」

「えっ!」

「まあ!」