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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

南へ飛ぶ夢

英夫の姿を見付けると、二、三人の人たちが、平林大尉の側へ来て、小声で何かひそひそと話しだした。

「君、それあいかん、絶対にいかんよ!」

疳癪をおこしたような、大尉の大きな声に、びっくりして英夫が見ると、

「新聞社の人たちです。あなたのことを新聞に書こうというのを、大尉殿が止めていられるんでしょう」

村山曹長が囁いた。

新聞に書かれては大へんである。英夫が困った顔をしていると、

「大丈夫です、絶対に書く気遣いはありません」

曹長がいった。

間もなく、飛行機は空港の土を蹴って離陸した。

帽子を振って見送っている村山曹長の体が、小指のように見え、やがて一つの黒い点のように小さくなった。

機体がボートのように揺れだしたのは、気流の変化に遇ったのだろう。

飛行機に乗ったのは、はじめてではなく、二、三度兄と一緒に乗ったことがあったが、出発の前の、さまざまな出来ごとを思い出して見ると、こうして機上の人になって、見知らない土地の冒険の中へとびこんで行くのは、何だか、夢のような気持がして来るのだった。

南へ飛ぶ夢

ブルンブルン、細かく機体をゆすっている爆音が、足もとから体に伝わって来る。