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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

壁に消えた男

あすこで連絡をとっているようなやつは怪しいやつですよ、さっそく今日からひとつ、頼みたいんですがね、実は、僕が特に船艙の点検をやらしてもらってるのもそのためなんです、やつらの隠れ家はあすこか、甲板以外にはないわけですからね」

英夫は宮崎運転士の頼もしげな話と、観察に、すっかり共鳴して引受けることにした。

壁に消えた男

真夜中の何時ごろなのであろうか――。

英夫は賄部屋の方に、ことり……と、鼠のようなかすかな物音を聞いた。

船長がいったように、船は、颱風圏内に入りかけたらしく、わずかばかりの交替を残して、全員非常警戒の部署についている時だった。

宮崎運転士から頼まれてから、昼のうちに眠っておくことにして、夜の間は眠らずにいた。

そーっと、暗闇をすかして見ると、いつの間に忍びこんだのか、黒いインクのシミのような人かげが、賄場の隅に、うずくまっている。

船室は暗かったが、白く塗った鉄板に、かすかな水明りが、外からさしこんでいて室内がおぼろげに見えるのだった。

腕時計をすかして見ると十一時四十五分をさしていた。

ほんのわずかばかりではあったが、ゆうべの無駄な努力につかれて、寝こんだ間に忍びこんだものらしかった。