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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
柔道の冴え
では、宮崎運転士も、まんまと一味の罠にひっかかってしまったのか!
「王、お前は女の子をふんづかまえろ」
趙は、がむしゃらに英夫との間を縮めると、鷲づかみにするような恰好で一気にとびかかって来た。
柔道の冴え
「あっ!」
という、祥子の悲鳴が聞えた。
英夫は、米俵のような、重い人間の体の、火の出るような体あたりを、ふわりとかわしたつもりだったが、相手が英夫の小楯にとっていた鉄柱にでも突きあたったのであろう、したたかな風に打つかったような気がした。
趙の体が、そのはずみによろよろっとしたところを狙って、胸のあたりをつかむと思いきり鋭い背負を入れた。
講道館で、柔道を習っていた時、師範が英夫に教えてくれた「空中歩行」の体勢で入れた見事な技だった。
英夫を見くびって躍りかかって来た相手だけに、背負投はあざやかにきまって趙の犢のような図体は、もんどりうってはげしく鉄板の上を叩き、
「うむ!」
と唸った。
英夫は、すかさず飛びかかると、胃の急所めがけて、全身の力をこめた拳を入れた。
最初の打撃で腰を痛めた趙は、起き上る力をうしなったらしく、英夫のはげしい突撃に狂った猛獣のようなうめきをあげて、懸命に身をもがいていたが、やがてがっくりとうつ伏せになった。