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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

大尉の任務

将軍は、気の毒そうにつけ加えた。

「そんなことはありません」

「はっはっは、負け惜しみをいっとるね……そのことにきまれば飛行機の手配はもう出来とるんだ、ただし香港までだ、それから先は便船で行ってもらわなければならんがね、その方の連絡は村山曹長がよく心得とるはずだよ」

ちょうどその時、卓上電話のベルがけたたましく鳴って、将軍は受話器をとり上げた。

「うむうむ……ほう……いや、それはおめでとう……」

「英夫君、シンガポールが陥落したぞ」

ガチャリンと受話器をかけると、将軍がいった。

英夫は思わず万歳を叫んだ。

「明日出発する英夫君へお餞別じゃ、はっはっは」

将軍はそれから、細々した注意と、途中で万一のことがおこったような時に、シンガポールの兄に連絡する無電の暗号を教えてくれた。

大尉の任務

エンジンの調子は上々らしい。プロペラーが蜜蜂のように規則正しいうなりをあげている。

東京空港を離れてから、飛行機は、青空と煙のような、薄いちぎれ雲の間を縫って進んでいた。

ミルクのような雲を被った山々や、白いチョークで線を引いたような海岸の波打際が、映画のフィルムのように過ぎて行く。