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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
祥子の身の上
曹長は、無雑作にこたえた。
祥子の身の上
どうして園部家のことなんかきいたんだろう?――そういう疑問が、ひょっこり英夫の頭にうかび上った。
園部の住んでいた、家の前を通る時だった。
「園部の家と親しくしておられたそうですが……」
曹長もその家に気がついたと見えて、
「……実にかあいそうなことをしました」
と、重い口調でいった。
「どうして園部さんを知ってるんですか?」
「園部の家内が、私の従妹にあたるのでありましてね」
「あっ、そうですか、じゃあご親戚だったんですね」
「そうです。私は支那事変がはじまってから、ずっと出征しておったもんですから、園部の失敗したこともちっとも知らずにいたんです。中尉殿と偶然なお話しからそれを知りまして、しかもご近所だとのことで驚きましたよ」
「じゃあ、僕の家の近所まで来たことがあるわけですね」
「――、ところが、園部の主人と私とはあまり仲がよくありませんでしたので、一ども来たことはないのですよ、マレーでゴム園をやっていたその弟の方とは子供のころから仲よしでしたがね。そんなわけですが、落ちぶれて田舎へ引籠ったとなるとかあいそうですから、こんど戦地からかえって、いろいろ問い合せて見ると、母親――つまり私の従妹も死んでしまって、女の子の引取り手もないという始末です、よくよく貧乏してしまったんです