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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
南支那海
荷役がまだ終らないらしく、がちゃがちゃと起重機を動かす音や、しゅっしゅっと白い蒸気の噴出する音が聞えた。
舳に白く――九竜丸――としてある船がそれだった。
九竜丸!
怪しげな火夫の趙を頼りに、貧しい様子をした少女が密航を企てようとしている船が、この船だったはずだ。
しかし平林大尉も英夫も、そんなことを知るはずもなく、荷役の監視に来ていた日本軍の歩哨に訳を話すと、船長に会うために、階段をのぼって行った。
船腹に開いた扉からも、支那人の苦力がしきりに荷物を運びこんでいた。
「苦力って力持だな、英夫君」
ふと、下を見おろしながら、大尉が何気なくそういった。
南支那海
英夫は船長のはからいで、天井の低い船員食堂の片隅に、寝床を一つ作ってもらった。
夜が明けきらないので、さっそく吊床にもぐりこんだが、外海へ出ると、怒り狂った大波にもまれるらしく、波の怒号と船腹を打つ瀑のようなしぶきのたびに、白いペンキを塗った天井が、てのひらをかえすように前後左右に傾いて行き、丸い鋲のとび出した鉄の柱や板が、一まい一まい、ねじ切られるような、きしみ音をたてるので、眠れなかった。