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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

香山飯店

だあーん!

ダ、ダ、ダ、ダ、……

砲弾と機関銃の音だった。

それと同時に、機は追風の方向にさっと身をひるがえすと、猛烈な勢いで急上昇をはじめたと見え、体の中心がぐんぐん下へ引ずりおろされて行くような気がした。

「座席にしっかりつかまっていたまえ、英夫君……」

平林大尉が落着いた声でいった。

出発の前に、村山曹長が話していた例の怪潜水艦が、こんな荒天に、こんなところへも現れているのだ!

もしかすると、ここで敵にやられてしまうかも知れない――と、英夫は思った。

「こんなところで死ぬのは残念ですね、おじさん」

「なあに、そんなに簡単にやっつけられてたまるもんか!」

平林大尉がどなった。

香山飯店

赤や、青や、黄色や、緑の毒々しい色をつかって飾りたてた一軒の支那料理屋がある。――塗りのはげた黒い板に、金文字で書かれた看板の字が、やっと「香山飯店」と読めるくらいで、汚らしい、料理屋とは名ばかりの安食堂だった。

こんな小店は、この辺にいくらでもある。

狭い路地の両側に、ごてごてと家のたてこんだ、香港でも場末の、支那人ばかりの住んでいる町だった。――それだけに、はじめてこの町へ来る者には、何の注意も引かないような家だった。