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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

怪しいトランク

怪しいトランク

窮屈な箱の中に何時間ぐらいいただろう……ながいながい時間を過したような気がした。お腹がすくと、パンや腸詰を食べた。そのせいかひどく咽喉が乾いて来た。

いつの間にか眠くなって、うとうととしていた時だった。

――こつこつ、こつこつ……

聞き耳をたてると、合図の音が聞えた。

祥子も小さい金槌で合図をかえした。

おなじような木箱が、たくさんある中から、見わけするために、趙と打合わしてあった合図の音だった。

「これにちげえねえ!」

ひそひそと囁く声が聞えて、箱の蓋が開かれ、祥子は箱の中から出された。

「トランクはあるだろうな、え、ねえちゃん、トランクをこっちへ出しな」

昼は、どこからともなく、かすかなうすあかりがもれて来るので、たぶん夜――真夜中ごろなのだろう、あたりはまっ暗で、趙と、もう一人の支那人らしい男が、懐中電灯を持って立っていた。

「あたし、重くって持てないわ」

「あっ、そうか、そいつはこっちが悪かった」

趙は、ごそごそと箱の中にもぐりこんで、トランクを取り出した。

祥子は、何よりも咽喉が乾いてたまらなかった。水をたのむと、

「ちぇっ、贅沢いってらあ……しようがねえ、王お前行ってくんで来い」