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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

密航少女

……用事がすんだら、こんどは一つ賄場の方から入って来て見ましょう。じゃあ、なるべく早く帰って来ます」

宮崎運転士は、重い扉の音をたてて出て行った。

急にあたりが、しんとして、船梁や鉄板のきしむ音、貨物の触れあう音が、際だって聞えた。

素裸の電球の、弱々しい、黄色い光だけをたよりに、英夫は、しずかに、一段一段階段を上って行った。

密航少女

僅かな通り路を残しただけで、荒い莚に包まれた箱が、ほとんど隙間なく、積みこまれている。

宮崎運転士のいったように、賄部屋の後側になるしきりには、開け閉ての出来るようになった扉が一枚はまっていた。把手のない鍵穴のついていることが直ぐわかった。

ためしに、賄部屋をのぞいて見ると、水道の栓のついた流し場が、うすぼんやりと見えるだけで、ほかには何も見えなかった。

じき近くで、かさかさと、藁の触れあう音がしたので、英夫は、はっとして、すばやくあたりを見まわした。

と、英夫の立っている扉の前から、鍵の手に曲った、ほんの二十歩とは距らない箱の隙間から、あわてて引っこんで行ったものがある。――咄嗟の間に、ちらりと見ただけで、何であったかわからなかった。