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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
バリト河
祥子は、なつかしそうに小箱を見つめた。
「祥子にも話して聞かせましたがね……」
叔父さんは、白いハンカチで汗を拭きながら、いいにくそうに、
「この子も、ぜひ御一緒に行きたいというのです、わたしの代理に、この子をお願いしたいのですがね」
「そりゃあ、無理ですよ、どんな危険にぶっつかるかわからんのですからね」
謙一が、にべもなくいった。
バリト河
「マングローブって、珍らしい胎生の植物ですってね」
祥子がいった。
船は今、バリト河をさかのぼっていた。バンジェルマシンから二百キロ、マルタプラ河をさかのぼり、紅樹林――マングローブの生い茂るバリト河の上流に入った。
昭南島から、わが陸海の荒鷲が、翼を休めるウリンの飛行場に着いたのは、きのうの正午だった。
祖先と日本のために、兄弟の冒険に加わろうとする祥子の願いは、さすがの謙一もことわりきれずに、おなじ飛行機で、ボルネオに飛んだのだった。
飛行場の将校たちは、謙一中尉のために、さかんな壮行会を催してくれた。その上、何か重大な事件がおこった場合には、無電で知らしてくれれば差支えのないかぎり、飛行機を出動させてもいいという親切な言葉を、隊長がはなむけしてくれた。