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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

ダイヤ族の酋長

「何でしょう!」

祥子も気がついて、燕のように消えて行く自動車の後姿を見送った。

「日本軍の自動車でしょうかね、兄さん?」

「標識のない自動車だ、どうもすこしおかしいな」

望遠鏡をのぞいていた謙一がいった。

ダイヤ族の酋長

五日目の正午ごろ、小蒸汽船は、ダイヤ族の住んでいる小さな村の桟橋から引きかえして行った。

ここから河幅が急に狭くなり、流れが早くなっていた。

英夫たちの食糧や、旅行道具を運びおわると、マレー人の船員は、心から心配そうに、

「ダイヤ族も今はおとなしくなりましたが、これから山地へ入ると、まだまだ首狩りをしている人喰人種がいるようです。お帰りには、ぜひ私たちがお迎えに来ますから、どうか失望させないで下さい」

「ありがとう、帰りにはまた頼むぞ」

謙一がいった。

桟橋には、焼けつくような陽に背中をさらした、ダイヤ族の子供や大人たちが、集っていて、英夫たちや荷物の方をじろじろと見ながらひそひそ囁きあっていた。

英夫たちが、小蒸汽の上で手を振っているマレー人たちを見送っていると、その中の痩せた背の高い男が一人、つかつかと近づいて来て、

「旦那がたは、日本人でしょう」