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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
明暗の道
足場が危険なので、丸木舟で、岸を伝って行くことにした。
ともすれば、覆りそうになる舟を、ほとんど抱きかかえるようにして、岩角から滝壺の裏側へまわろうとした時だった。
突然、ぴたりと吸盤に吸い寄せられるような力で、船底が吸いつけられたかと思うと、丸木舟は、くるりと一廻転して、軌道に乗った車のようにするすると滝壺の裏側にのまれて行って、いつの間にとびこんだのか真っ暗な洞窟の中を、絃を放れた矢のような勢いで押し流されていた。
明暗の道
洞窟はしだいに幅をひろげて、暗々と、不気味な闇をたたえていた。
そして、ここへとびこんだ瞬間から、しだいに寒さを増して行った。――これは不思議なことだ、バリト河をさかのぼってから、赤道へ、赤道へと近づいていた。げんに、三人が滝壺の、土砂降りのようなしぶきを浴びていた時でも、うすいシャツ一枚で、すこしの寒さも感じなかったではないか!
流れは、一方に向って、ひた流れに流れているらしく、舟はほとんど変らない速度で押し流されて行き、時々、洞窟の曲り角にでもさしかかるのであろうか、狂った磁石のように強くかぶりをふった。
「ずいぶん深い洞窟ね、さっきからもう何時間ぐらいたったでしょう」