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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
雪の足跡
広東からの、あの、わかったような、わからないような手紙の意味が、やっと、のみこめたような気がしたからである。
――そうだ、兄さんはもう、香港か、フィリッピンか、マレーか、あるいは南洋か、どこかで活動をはじめていたのだ。
そのうちにも、皇軍の戦果は、だんだん拡げられて行った。グアム島、ウエーキ島がまたたく間に占領され、十二月二十六日には香港が落ち、一月二日にはマニラが落ちた。
悪竜の眼玉のように、たった一つ残っている敵の根拠地、シンガポールに、今は攻撃が集中されていた。
――ああ、兄さんはどこにいるのだろう?
いつ僕を現地によんで、手伝わしてくれるのだろう!
英夫は、まい日、ラジオを聞きながら、胸をおどらしていた。まい日、兄からのたよりを待ちつづけていた。
いくども、玄関の郵便箱をのぞきに行っては、小母さんに笑われた。
家へ近づくと、英夫の足がひとりでに早くなるのも、そのためだった。
雪の足跡
「おいおい、英夫君、英夫君じゃないか」
軍医学校から、道を曲ろうとして、気がつくと、カーキ色のマントを着た将校が一人、にこにこしながら立っていた。
「あっ! 鳥尾の小父さん、今日は……」