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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
――難破だ!
英夫は咄嗟に思った。
「救命帯を着けよう、祥ちゃん、難破したらしい」
「難破ですって! 大へんだわ」
「あわてちゃだめだ、落着いて…」
扉をこじ開ける音がした。
「大へんなことになりましたよ……僕です……宮崎です……」
英夫と、祥子も手伝って、閾にくい入った扉をようやく引きはがした。
全身、波のしぶきで濡れ鼠になり、だらだらと雫をたらした宮崎運転士が帽子も吹きとばされたらしく、乱れた髪をなで上げながら、
「とうとう、この船も最期です、船長が心配していますから直ぐ上甲板へ出ましょう。君たちのためにボートの用意はしてあります、救命帯は着けましたね、僕が案内しますから、お互いに手をしっかりとつなぎあっていて下さい」
二人は、宮崎運転士に引きずられるように、甲板に出た。
空も、海も、陰々とした夜闇の中に、百千の鞭をふるうような風の音と、夜目にも白くしぶきをあげて甲板を襲う大波の轟きが、たちまち三人を、つんぼにしてしまった。
「あっ!」
と、祥子は、頭からしぶきを浴びて叫んだ。
甲板は、すっかり波に洗われ、避難する船員たちが、懸命にボートにしがみついていた。