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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
崇高な最期をとげた船長も、二人のために必死の努力をはらった宮崎運転士も、いまはおなじ海底に眠っていることだろう。
英夫と祥子は、幸いお互いにはなればなれにもならず顛覆したボートにすがって漂流をつづけていた。
そして、夜もあけ、海面がしだいに穏やかになり、思いがけない珊瑚礁を間近に見た時には、二人とも、いままでの苦しさからすくわれたように、ほっとした。
「おそろしい夢から、急にたのしい夢を見ているような気がするなあ!」
英夫も、空腹と咽喉のかわきを忘れて、ボートの上にとび上った。
「陸へ上ったら、直ぐ何か食べるものと、飲みものを探しましょう、あたし、急におなかがすいて目がくらみそうになったわ」
「そら! あすこに茂っているのは椰子の樹だぜ! 椰子の実をとって飲もう、何かほかの果物もあるかも知れないし……、魚だってこんなにうんといるんだから、いくらでもとれるよ」
船腹の板をはがして作った橈で漕ぐ船あしは、のろのろとしてもどかしかったが、椰子の茂った海岸へたどって行けそうな岩礁はもう目の前だった。
「無人島かしら……人喰人種なんかいやしない?」
「無人島さ、あんな小さな島に人喰人種なんか住めっこないよ」