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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

ひどく丁寧なものごしである。

もう夕暮れ近くで、青白い夕闇が、雪の上に立ちこめていて、玄関はうす暗かった。

あれじゃ、暗がりに立っていたら、ちょっとわかりませんね――と、小母さんが笑っていたのを思い出して、英夫は玄関の電灯のスイッチをひねった。

すると、小母さんの話したのとそっくりな、黒い外套を着て、黒い帽子を手にした男の姿が、目の前にあらわれた。――ただ、すこし違うのは、何か悪い、陰険な感じをうける顔ではなくて、陽にやけた、頑健そうな頬と、にこにこした人なつっこい笑いだった。

「村山作太郎であります。お初めて……」

英夫がすこし、あっけにとられて立っていると、軍隊式の不動の姿勢で、ぴょこりと腰から上を曲げた。

なるほど、鋭い目付はしているが、それは、軍人特有の真面目で、真剣な目付だった。

部屋へ案内すると、英夫はあらためて、

「僕、英夫です」

と、挨拶した。

「は、存じております……。早速でありますが、実は、重大な用件でお迎えに上ったのであります」

「えっ! 僕にですか」

「は、もちろん、中尉殿……、いや、あなたにであります」

いい違えたので、ちょっと苦笑をうかべた。