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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
襖を張り替えるのは毎年十二月だから、かるたとか追い羽根とか、お手玉、おはじきなど、たあいのないものだし、女の子の遊び相手をするなど屈辱さえ感じたものだ。けれども大事なとくい先のことではあり、兄弟子たちがそうしろと云うので、断わるわけにはいかず、しぶしぶつきあっているうちに、どの遊びでも彼がいちばん上手になり、勝気なおそのはくやしがってよく泣いたものであった。
伴れてゆかれたのは姉妹の部屋で、箪笥がそれぞれ二棹ずつに、人形などを置いた飾り棚、琴、三味線、茶道具を入れる茶箪笥、朱塗の衣桁など、みな娘の居間らしい華やかな色と、香料の匂いがあふれていた。
「あたし十六になったでしょ」とおそのが自分の箪笥の前に膝をつきながら云った、「――それでね、また友禅の振袖を作ってもらったのよ、きれいよう」
そして抽出の一つをあけ、中からその品を取り出して、さも大切そうに両手で持って栄二に渡した。
「ひろげてみてよ」とおそのが云った、「四季の千草って云う柄なの、京の田丸屋で染めさしたのよ」
「あたしのは裾模様よ」と姉のおきみが二人の脇から云った、「あたしのも見せてあげるわ」