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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
もなんて悪いことを云ったんだろうって、あたしずいぶん自分を憎んだもんだわ」
あたしはすぐにとんで来たかった、自分が思い遣りのないことを云ったからではない、さぶちゃんは与力の青木さんていう人から詳しい話を聞いたし、三月には金襴のこともわかった。さぶちゃんからそれをうちあけられて、あんたがどんな気持でいるかと思うと、いても立ってもいられなくなった。けれどもさぶちゃんはあたしを止め、おすえさんにもまだないしょにしている、栄さんは気が立っていて会いたがらないし、いま会いにゆけば、却って怒りをかきたてるだけだろう、もう少しようすをみてからにするほうがいいと、繰返し云った。
「病気で葛西へ帰るまで、さぶちゃんの頭は栄さんのことでいっぱいだったのよ、あんたの身になって考えて、会いにいこうとするあたしのこともよせと止めたし、おすえさんには心配させまいとして、なにもかもないしょにしていたのよ、――それだのに」と云っておのぶは声を低くした、「あんたはそうやってあぐらをかいて、さぶはてんで鈍いやつだなんて云って、すましてる、そんなにひどいめにあったっていうのに、栄さんはちっとも変ってはいないわ、元どおり頭のいい、おとこまえの、苦労知らずよ」