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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
栄二はすばやく撞木杖を取って構えた。
「よしたほうがいい、小島さん」と栄二は静かに云った、「あっしを斬ったところで、証人はほかにいくらでもいるんだ、また、あっしを斬るにはちょっと骨が折れますぜ」
小島の顔に思い惑ったような表情がうかんだ。すると三人の男たちが、六尺棒のような物を持ってこっちへ進み出た。
「いけねえ、出ちゃあいけねえ」と栄二は小島を睨んだままで叫んだ、「これはおれ一人の仕事だ、坐っててくれ」
小島良二郎は部屋にいる人足たちの顔を、恐怖に襲われたような眼で、すばやく眺めまわした。
「刀をおしまいなさい」と栄二が云った、「あんたのことはなにも云やあしない、こんどは役所から人が来るでしょう、じたばたしてもだめだ、刀をしまってここから出ることです」
小島は抜身を持ったまま、じりじりとあとじさりをし、戸口から外へ出ていった。
与平は二人の小頭とともに、義一とりゅうの傷をしらべながら、誰かさんてつ先生を呼んでくれ、と云った。先生は夜はいないよ、と二、三人が答えた。小島良二郎が去ったとたんに、部屋ぜんたいが生き返ったようになり、みんながうろうろと動きまわったり、やかましく話しあったりしていた。