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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
「いやだわ、うちの人だなんて」
「いやだわ、うちの人だなんて」おのぶは口まねをし、それからまたおすえを睨んで云った、「――頬っぺたが火事よ」
その日は四月七日。北町奉行の仮牢から出された栄二を、さぶとおすえが引き取って来たところであった。栄二は仮牢に七日いた。石川島からは「再吟味」ということで差し戻されたが、吟味らしいことはなにもなく、五日のあいだ仮牢に入れられたあと、与力の青木又左衛門に呼出されて、自宅へ帰る気があるかときかれた。
――下谷坂本二丁目の家主源助とさぶがいっしょに来て、そのほうを引き取りたいと願い出た、住居も借り、しょうばいの手掛りもついたという、奉行所としても、そのほうは帰宅すべきだと思うが、どうか。
又左衛門はそう云った。自分がこの町奉行所にいることを、さぶがどうして知ったかは疑うまでもない。さぶは栄二のゆくえを捜すうちに、町廻りの青木功之進と会い、助力を頼んだという。又左衛門は功之進の一族であり、栄二のことではつねに功之進と連絡があったようだ。しぜん石川島から町奉行へ移されたことも、さぶにはすぐ知らせがいったに相違ない。――それにしても、寄場の出来事についての再吟味はどうなるのか、どんなに岡安喜兵衛が奔走しても、あの傷害の現場は部屋の者たちが見ていたのだから、このまま沙汰なしで済ませる