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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

おそらくこのままおさまっていくだろう、そう思ったから、栄二は青木又左衛門にそのことを申出たのであった。

奉行所では預かっておいた栄二の衣類のほかに、寄場で稼いでためた賃銀を渡してくれた。それは五両二分と少しあり、栄二が心づもりにしていた額よりは多かった。彼はそれを二つに分け、半分を寄場へ送ってくれるようにと頼んだ。――長屋はまもなく建て直されると聞いたのでその費用の中へ加えてもらいたいのだ。栄二がそう云うと、又左衛門はじっと彼の眼を見ていてから、黙って頷いた。

引取りに来たのはさぶとおすえで、坂本町の家主というのはいなかった。返された着物や帯はよごれていたし、おすえが仕立ておろしの品を持って来ていたので、下からすっかり新しいのに着替えた。そのときおすえが、着替えに手を貸しながら、すみよしへ寄ってゆこうと云いだしたのであった。

「今日はほんのまねだけよ」おのぶは三人のために膳拵えをしながら云った、「このつぎにゆっくりお祝いをするわね」

女主人は銭湯へいったそうで、お松という小女がおのぶの手伝いをした。女中は三人いるが、みんなかよいで、四時にならなければ来ないという。