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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
十六の四
と岡安は云った、「こんどの男は馬方で、おとよより五つもとし下だそうだ」
ことによると清七は、田舎へ帰ったのかもしれない、と岡安喜兵衛は云った。
十六の四
田舎へ帰るわけはない、と栄二は思った。あれほどおとよに惚れぬいていた彼が、自分から別れるなどということも考えられない。木挽町へ移ってから姿を消したという、監視がついていて、「姿を消した」というのは、なにか尋常でないことがあったのではないか。清七のあとおとよといっしょになった、五つもとし下の馬方だという男のことが、暗い不吉な影のように栄二の胸をふさいだ。
「どうしたんだ、清さん」栄二は坂本町へ帰る駕籠の中で、そっと呼びかけた、「おめえどこにいるんだ」
もしもどこかに無事にいるなら、いっそ寄場へ帰るほうがいい、島にさえいれば人から痛めつけられずに済むからな、と栄二は祈るように呟いた。
さぶは戻るようすがなかった。大和屋から紙が届き、栄二は尺取帳に合わせて、それらを切ることに没頭した。さぶのことを思うと肚が立つから、紙を寸法どおりに切る、という仕事のほかはなにも考えなかった。そうして、晩めしのあとでは、酒を飲んで気をまぎらわした。