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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
劉表は、彼を城内に引いて、親しく玄徳の境遇を聞きとると、即座に、快諾してこういった。
「漢室の系図によれば、この劉表と劉備とは、共に宗親のあいだがらであり、遠いながら彼は予の義弟にあたる者である。いま九郡十一州の主たる自分が、一人の宗親を見捨てて扶けなかったとあれば、天下の人が笑うだろう――すぐ荊州へ参られよと、伝えてくれい」
すると、侍側の大将、蔡瑁がそばから拒んだ。
「無用無用。その儀は、お見合わせがよいでしょう。――玄徳は義を知らず恩を忘れる男です。はじめは呂布と親しみ、のち曹操に仕え、近頃また、袁紹に拠って、みな裏切っています。それを以てその人を知るべしで、もし玄徳を当城に迎えたら、曹操が怒って、荊州へ攻め入ってくる惧れもありましょう」
聞くと、孫乾は色を正して、
「呂布は、人道の上において、正しき人であったか。曹操は真の忠臣か。袁紹は、世を救うに足る英雄か。ご辺はなぜ、ことばを歪曲して、無用な讒言をなさるか」と、つめ寄った。
劉表も叱りつけて、
「要らざるさし出口はひかえろ」
と一喝したので、蔡瑁も顔あからめて黙ってしまった。
自壊闘争
一
玄徳が、その一族と共に、劉表を頼って、荊州へ赴いたのは、建安六年の秋九月であった。