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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
その袁尚の軍隊はもう陽平という地点まで来て、通路のひらくのを待っていた。その通路は城内から切り開いてやらなければならなかった。
主簿の李孚は、審配へ向って、こういう一案を呈した。
「この上、外にある味方の大兵が城内に入ると、たちまち兵糧が尽きます。けれども、城内には、何の役にも立たない百姓の老若男女が、何万とこもっています。それを外へ追いだして、曹操へ降らせ、そのあとからすぐ、城兵も奔出します。兵馬が出きったとたんに、城中の柴や薪を山と積んで、火の柱をあげ、陽平にある袁尚様へ合図をなし、内外呼応して血路を開かれんには、難なくお迎えすることができましょう」
「そうだ、その一策しかない」
審配は直ちに用意にかかった。そして準備がなると、城内数万の女子どもや老人を追い立て、城門を開いて一度に追いだした。
白いぼろ布れ、白い旗など、手に手に持った百姓の老幼は、海嘯のように外へ溢れだした。
そして、曹丞相、曹丞相と、降をさけんで、彼の陣地へ雪崩れこんできた。
曹操は、後陣を開かせて、
「予の立つ大地には、一人の餓死もさせぬぞ」と、すべてを容れた。
数ヵ所の大釜に粥が煮てあった。