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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「ああ。また何かなければよいが」と、先頃の不愉快な思い出が胸に疼いてきた。

張飛は、仔細を知ると、「ご無用ご無用、そんな所へ行って、何の面白いことがあろう。断ってしまうに限る」と、無造作に止めた。

孫乾もほぼ同意見で、

「お見合わせがよいでしょう。おそらくは、蔡瑁の詐計かも知れません」と、観破してしまった。

けれど関羽、趙雲のふたりは、

「いま命にそむけば、いよいよ劉表の疑心を買うであろう。如かず、ここは眼をつぶって、軽くお役目だけを勤めてすぐお立ち帰りあるほうが無事でしょう」

と、すすめた。玄徳もまた、

「いや、わしもそう思う」

と、三百余騎の供揃いを立て、趙雲一名を側に連れて、即日、襄陽の会へ出向いて行った。

襄陽は、新野をさること遠かった。約八十里ほどくると、すでに蔡瑁以下、劉※(「王+奇」、第3水準1-88-6)、劉※(「王+宗」、第3水準1-88-11)の兄弟だの、また王粲、文聘、義、王威などという荊州の諸大将まで、すべて旺な列伍を敷いて、玄徳を出迎えるため立ち並んでいた。

二

この日、会するもの数万にのぼった。文官軍吏の賓客、みな盛装をこらし、礼館の式場を中心に、宛として秋天の星の如く埋まった。