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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

四

と、たしなめた。すると司馬徽も、われながらおかしくなったとみえ、好々、おまえの意見も、大いに好々。

といったそうである。

四

童子がきて、質素な酒食を玄徳に供えた。司馬徽も、食事をともにし、やがて、

「お疲れであろう。まあ、こよいは臥房へ入っておやすみなさい」と、すすめた。

「では、おことばに甘えて」

と、玄徳は、別の部屋へはいったが、枕に頭をつけても、なかなか寝つかれなかった。

そのうちに、深夜の静寂を破って、馬のいななきが聞え、屋の後ろのほうで人の気はいや戸の音がする。

「……はてな?」

風の音にも心をおく身である。思わず耳をすましていた。

屋は手ぜまなので、裏口から主の部屋へ入って行く沓音までよく聞える。

「やあ、徐元直ではないか。いま頃、どうして来たのか」

主の司馬徽が声であった。

それに答えたのは、壮年らしいさびのある声色の持ち主で、

「いや先生。実は荊州へ行っていました。荊州の劉表は近頃の名主なりと、或る者から聞いたので、行って仕えていましたが、聞くとみるとは、大きな違い、から駄目な太守です。すぐ嫌気がさしてきましたから、邸へ遺書をのこして逃げてきたわけです。