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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
二
新野をへだたるわずか十里の地点まで、曹仁、李典の兵は押してきた。これ、わが待つところの象――と、単福は初めて味方をあやつり、進め、城を出て対陣した。
先鋒の李典と、先鋒の趙雲のあいだにまず戦いの口火は切られた。両軍の戦死傷はたちまち数百、戦いはまず互角と見られたがそのうち趙雲自身深く敵中へはいって李典を見つけ、これを追って、さんざんに馳け立てたため、李典の陣形は潰乱を来し、曹仁の中軍まで皆なだれこんで来た。
曹仁は、赫怒して、
「李典には戦意がないのだ。首を刎ねて陣門に梟け、士気をあらためねばならん」
と、左右へ罵ったが、諸人になだめられてようやくゆるした。
二
曹仁は次の日、根本的に陣形を改めてしまった。自身は中軍にあって、旗列を八荒に布き、李典の軍勢は、これを後陣において、
「いざ、来い」と、いわぬばかり気負い立って見えた。
新野軍の単福は、その日、玄徳を丘の上に導き、軍師鞭をもって指しながら、
「ご覧あれ、あの物々しさを。わが君には、今日、敵が布いた陣形を、何の備えというか、ご存じですか」
「いや、知らぬ」
「八門金鎖の陣です。――なかなか手ぎわよく布陣してありますが、惜しむらくは、中軍の主持に欠けているところがある」