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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
と、思わず十里ほどきてしまった。
徐庶の馬もつい進まず、
「ご縁だにあれば、これも一時のお別れになりましょう。お体をお大事にして、徐庶が再び帰る日をお待ちあそばし下さい」と、なぐさめた。
かくてまた、いつか七、八里もきていた。城外をへだつことかなり遠い田舎である。諸将は帰途を案じて、
「いくら行っても、お名残は尽きますまい。もはやここで」と、一同して馬を控えた。
玄徳は馬上から手をさしのべた。徐庶もまた手を伸ばした。かたく握りあって、ふたりの眸はしばし無言の熱涙を見交わしていた。
「……では、健やかに」
「あなた様にも」
「おさらば」
しかも玄徳の手はなお、徐庶の手をかたく握っていてはなさなかった。
滂沱たる涙とともに、手もまたふるえ哭くかのようだった。
「――おさらばです」
ついに、徐庶はもぎはなして、駒のたてがみに、面を沈めながら馳け去った。
諸将は、一斉に、手を振って、そのうしろ影へ、
「さらば」
「さらば――」
を告げながらどやどや駒をかえし始めた。そして玄徳を包んで元の道へ忙がわしく引っ返した。
未練な玄徳は、なお時々、駒をたたずませて、徐庶の影を遠く振り向き、