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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
てまえもこれからその婿をたずねに行く途中ですが、……それでは今日も留守ですかい」
やれやれといわぬばかりに、老翁は眉を降りしきる雪に上げて考えていたが、
「ここまで来たこと、てまえは娘にでも会いましょう。ひどい雪じゃ、途中の坂道をお気をつけなされ」と、ふたたび驢馬に乗って立ち別れた。
意地悪く、雪も風もやまない。道の難渋はいうまでもなかった。来がけに立ち寄った例の居酒店のある村まで来たときは、すでに日も暮れかけていた。
いくら長尻でも大酒でも、昼の石広元や孟公威はもうそこにはいないだろう。その代りに、ほかのお客がこみあっているらしい。飲んだり騒いだり盛んにがやがややっている。そして鉢を叩きながら、その客達がうたうのを聞けば――
莫レ学孔明択レ婦
止レ得二阿承醜女一
これをもっと俗歌的にくだいて、おまけにこの辺の田舎訛りを加え、
嫁えらみも、たいがいに
孔明さんがよい手本
択りに択ったその末が
醜女のあしょうを引きあてた。
と、笑い囃しているのであった。
孔明の新妻が、不縹緻なことは、この俚謡もいっているとおり、村では噂のたねらしい。
さっき小橋で出会ったのが嫁さんの父親である。