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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

二

「あわれな者、かなえてつかわすがよい」

夫人のゆるしに、関羽もよろこび、周倉はなおのこと、欣喜雀躍して、

「ああ、有難い!」と、天日へさけんだほどだった。

だが、裴元紹は、周倉が行くなら自分にも扈従をゆるされたいと、彼につづいて、関羽に訴えた。

周倉は、彼をさとして、

「おぬしが手下を預かってくれなければ、みなちりぢりに里へおりて、どんな悪行をかさねるかもしれない。他日かならず誘うから、しばらく俺のため山に留まっていてくれ」

やむなく裴元紹は手下をまとめて、山寨へひきあげた。

周倉は本望をとげて、山また山の道を、身を粉にして先に立ち、車を推しすすめて行った。

ほどなく、目的の汝南に近い境まで来た。

その日、一行はふと、彼方の嶮しい山の中腹に、一つの古城を見出した。白雲はその望楼や石門をゆるやかにめぐっていた。

二

「はて、あの古城には、煙がたちのぼっている。何者が立て籠っているのであろうか」

関羽と孫乾が、小手をかざしている間に、周倉は気転よくどこかへ走って行って、土地の者を引っ張ってきた。

その土民は猟夫らしい。人々に問われてこう話した。

「三月ほど前のことでした。