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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
その両家がまた相結んで南北から呼応し、彼の腹背を攻めれば、曹操がいかに中原に覇を負うとも、破るるは必定でありましょう」と、軍事同盟の緊要を力説し、天下を二分して、長く両家の繁栄と泰平を計るべき絶好な時機は今であるといった。
孫策は大いに歓んだ。彼も打倒曹操の念に燃えていたところである。
これこそ天の引き合わせであろうと、城楼に大宴をひらいて陳震を上座に迎え、呉の諸大将も参列して、旺なもてなし振りを示していた。
すると、宴も半ばのうちに、諸将は急に席を立って、ざわざわとみな楼台からおりて行った。孫策はあやしんで、何故にみな楼をおりてゆくかと左右に訊ねると、近侍の一名が、
「于吉仙人が来給うたので、そのお姿を拝さんと、いずれも争って街頭へ出て行かれたのでしょう」
と、答えた。
孫策は眉毛をピリとうごかした。歩を移して楼台の欄干により城内の街を見下ろしていた。
街上は人で埋まっていた。見ればそこの辻を曲っていま真っすぐに来る一道人がある。髪も髯も真っ白なのに、面は桃花のごとく、飛雲鶴翔の衣をまとい、手には藜の杖をもって、飄々と歩むところ自から微風が流れる。