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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
市街は河となって濁流に馬も人も石も浮くばかりだった。それ以上降ったら万戸洪水にひたされそうに見えたが、やがて祭壇の上から誰やらの大喝が一声空をつんざいたかと思うと、雨ははたとやみ、ふたたび耿々たる日輪が大空にすがたを見せた。
刑吏が驚いて、半焼の祭壇のうえを見ると、于吉は仰向けに寝ていた。
「ああ、真に神仙だ」
と、諸大将は駈け寄って、彼を抱きおろし、われがちに礼拝讃嘆してやまなかった。
孫策は轎に乗って、城門から出てきた。さだめし赦免されるであろうとみな思っていたところ彼の不機嫌は前にも増して険悪であった。武将も役人もことごとく衣服の濡れるもいとわず于吉のまわりに拝跪したざまが、彼の眼には見るに耐えなかった。
「大雨を降らすも、炎日のつづくも、すべて自然の現象で、人間業で左右されるものではない。汝ら諸民の上に立つ武将たり市尹たりしながら、なんたる醜状か。妖人に組して、国をみだすも、謀叛してわれに弓をひくも、同罪であるぞ。斬れッ、その老爺を!」
諸臣、黙然と首をたれているばかりで、誰も、于吉を怖れて進み出る者もなかった。
孫策はいよいよ憤って、
「なにを臆すかッ、よしっ、このうえは自ら成敗してくれん。