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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
初代さんは私がなかったなら諸戸の求婚に応じたかも知れない。諸戸と結婚さえすれば彼女は殺されなくて済んだのだ。深山木氏は、いうまでもなく、私さえ探偵を依頼しなければ、丈五郎の魔手にかかる様なことはなかった。少年軽業師もそうだ。又徳さんにしろ、その息子にしろ、私がこの島へ来なかったら、又影武者なぞを頼まなかったら、まさかこんなみじめな最後をとげることはなかったであろう。
考える程、私は空恐ろしさに身震いした。そして、殺人鬼丈五郎を憎む心が、昨日に幾倍するのを覚えた。もう初代さんの為ばかりではない、外の四人の霊の為にも、私はあくまでこの島に踏み止まって、悪魔の所業をあばき、復讐の念願をとげないでは置かぬ。私の力は余りに弱いかも知れない。警察の助力を乞うのが万全の策かも知れない。だが、この稀代の悪魔が、ただ国家の法律で審かれたのでは満足が出来ぬ。古めかしい言葉ではあるが、目には目を、歯には歯を、そして、彼奴の犯した罪業と同じ分量の苦痛を嘗めさせないでは、此の私の腹が癒えぬのだ。
それには、丈五郎が私をなきものにしたと思い込んでいるのを幸、先ず出来る丈け巧みに、徳さんの息子に化けおおせて、彼の目を逃れることが肝要だ。