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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
意外な人物
意外な人物
諸戸は私を離した。私達は動物の本能で、敵に対して身構えをした。
耳をすますと、生き物の呼吸が聞える。
「シッ」
諸戸が犬を叱る様に叱った。
「やっぱりそうだ。人間がいるんだ。オイ、そうだろう」
意外にも、その生き物が人間の言葉を喋った。年とった人間の声だ。
「君は誰だ。どうしてこんな所へ来たんだ」
諸戸が聞返した。
「お前は誰だ。どうしてこんな所にいるんだ」
相手も同じことを云った。
洞窟の反響で、声が変って聞えるせいか、何となく聞覚えのある声の様でいて、その人を思い出すのに骨が折れた。暫くの間、双方探り合いの形で、黙っていた。
相手の呼吸が段々ハッキリ聞える。ジリジリと、こちらへ近寄って来る様子だ。
「若しや、お前さん方は、諸戸屋敷の客人ではないかね」
一間ばかりの近さで、そんな声が聞えた。今度は低い声だったので、その調子がよく分った。
私はハッとある人を思出した。だが、その人は已に死んだ筈だ。丈五郎の為に殺された筈だ。……死人の声だ。一刹那、私はこの洞窟が本当の地獄ではないか、私達は已に死んでしまったのではないか、という錯覚を感じた。
「君は誰だ。