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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

再び怪老人

再び怪老人

私は二晩続けて諸戸の家を訪れたのであったが、第一の晩は諸戸が不在の為、空しく玄関から引返す外はなかったけれど、第二の晩には私は意外の収穫を得たのである。

もう七月の中旬に入っていて、変にむし暑い夜であった。当時の池袋は今の様に賑かではなく、師範学校の裏に出ると、もう人家もまばらになり、細い田舎道を歩くのに骨が折れる程、まっ暗であったが、私は、その一方は脊の高い生垣、一方は広っぱといった様な、淋しい所を、闇の中に僅かにほの白く浮き上っている道路を、目を据えて見つめながら、遠くの方にポッツリ、ポッツリと見えて居る燈火をたよりに、心元なく歩いていた。まだ暮たばかりであったが、人通りは殆どなく、たまさかすれ違う人があったりすると、却って、何かもののけの様で、不気味な感じがした程であった。

先に記した通り、諸戸の邸は仲々遠く、駅から半里もあったが、私は丁度その中程までたどりついた頃、行手に当って、不思議な形のものが歩いているのを気附いた。脊の高さは常人の半分位しかなくて、横幅は常人以上にも広い一人物が、全身をエッチラオッチラ左右に振り動かしながら、そして、その度に或は右に或は左に、張子の虎の様に、彼の異常に低い所についている頭をチラチラと見せながら、難儀相に歩いて行くのである。